先入観だけでなくできれば読みを入れる

上図は、先後逆で角換わりからの進展で▲3三同桂成と桂馬を取った局面。ソフトの評価値+206で互角。

将棋でよく迷うのは、矢倉のような形で3三の地点で桂馬を交換したときに何で取るかというのがあります。

似たようなケースで、穴熊で端攻めをされて△9七歩と打たれたときに、▲同香か▲同桂か▲同銀かなど迷うこともあります。

穴熊の場合は最初は▲同香で次が▲同銀で最後に▲同桂が多いイメージですが、本局のような矢倉の場合は△同銀か△同金寄か△同金上かが迷います。

何で取るかは駒の配置や相手の持ち駒などによって全く違ってくるのですが、そのときの気分なども影響して自分の中では基準みたいなものはもっていません。

対局中はこのあたりの形勢を悲観しており、どこかで▲3六角のような飛車取りもあるので、少しでも上部を厚くした方がいいと思い△3三同金上としました。

実戦は△3三同金上で、以下変化手順で▲4五歩△3五銀▲4七桂△2六銀▲5五桂で、ソフトの評価値+503で先手有利。

この手順の△3三同金上はこの場合よくなかったようで、▲4五歩という手がありました。

4五の地点はどこかで▲4五銀と駒をぶつけるような筋があるので、普通はそこに▲4五歩と打つのは考えにくいです。

しかし△3五銀と逃げたときに▲4七桂がうまい継続手で、△4六銀と逃げても△3六銀と逃げても△5五桂が金と銀の両取りになります。

先手の飛車と角がちょうど銀の影になっていたのですが、△5五桂と跳ねることでぴったり両取りになります。

▲5五桂と跳ねた形は、4四にあった銀が△2六銀と攻めにも守りにも役立っていない感じで、金駒1枚遊んでいるので先手有利です。

具体的にここから後手がどう指すのかという以前に、2六の銀の形がひどすぎてどこかで△3七銀成が飛車取りのような手はありますが、それより先に先手の攻めがさく裂しそうな感じでとても指す気がしません。

△3三同金上では△3三同金寄がありました。ソフトの評価値+229で互角。

この手順は△3三同金寄で4三の金が3三に移動したので、どこかで▲5五桂と打った手が金取りということはありません。

ただし、▲3六角とや▲3四歩と打つ手や▲4五歩と打つ手など気になる手があります。

△3三同金寄以下▲3六角なら△5四桂▲5五銀△同銀▲同銀△4七歩▲同飛△7七歩で、ソフトの評価値-1735で後手優勢。

この手順はうまくいきすぎですが、▲3六角と出るのは飛車取りに出るのは△5四桂があったようです。

▲5五銀左は悪手だったようですが、銀交換して△4七歩~△7七歩で後手が指せているようです。

▲3六角と出ると8七の地点が弱くなるので、逆に後手の攻めが厳しくなるようです。

△3三同金寄以下▲3四歩△同金▲2六桂△3三金引▲3四歩△4三金寄▲6五銀直△同歩▲4五銀△同銀▲同飛△6六歩で、ソフトの評価値-368で後手有利。

この手順は▲3四歩~▲2六桂~▲3四歩と叩く手で、攻めの拠点ができるので後手としても嫌な形です。

△4三金寄に▲4五銀とぶつけて銀を捌く手で、将来▲3三銀のような手が生じますので後手も神経を使いますが、△6六歩と玉頭に手をつけていい勝負のようです。

△3三同金寄に▲4五歩なら△3五銀▲3六歩△2六銀で、ソフトの評価値-265で互角。

この手順は▲4五歩~▲3六歩とすると後手の銀は△2六銀であまりいい形ではありませんが、先手も飛車の利きや角の利きに歩を打って止めることになり、これは先手も攻めを継続するのが少し難しくなります。

本局のような何で取るかは結構迷いますが、ぱっと見で自分の中であまりいい感じでなかった△3三同金寄がソフトの推奨手だったので、先入観だけで手を選ぶのは結構難しいです。

やはり少しでも読みが入れられるなら入れた方がよさそうです。

先入観だけでなくできれば読みを入れるのが参考になった1局でした。