意外なところから手を作る

上図は、居飛車対振り飛車の対抗形からの進展で△1二飛と6二の飛車が逃げた局面ソフトの評価値+827で先手優勢。

駒割りは金と銀の交換で先手が少し駒得で5三に角が成っていますが、後手から次に△5八歩成とすると飛車を取れる形なので、先手が忙しいと思っていました。

この局面で飛車を逃げるのでは先手が悪いと思っていたので、別の手を考えていましたがあまりいい手が浮かびませんでした。

この局面が先手優勢だったのは全く意外でした。

実戦は△1二飛以下▲6四歩△6二銀▲5四馬△5八歩成▲6三金△7一銀打で、ソフトの評価値+504で先手有利。

この手順は▲6四歩と後手の歩の裏に歩を垂らす手で、これは自然に浮かびますが後手も△6二銀と打って6三の地点を補強します。

それ以後は先手は数の攻めで6三の地点に駒を足しますが、後手も△7一銀打と進んで千日手模様になりそうです。

ソフトの評価値はこの局面も先手がよさそうですが、最初の局面での▲6四歩は2番目の候補手で推奨手は▲2四歩でした。

▲2四歩でソフトの評価値+802で先手優勢。

この局面の▲2四歩は見た時はさっぱり意味が分かりませんでした。

後手玉が8一にいるのに2筋を攻めて効果があるのかと思いましたが、これが意外と厳しいようです。

将棋には浮かびづらい手というのがありますが、この▲2四歩もそのような手だと思います。

▲2四歩に△同歩なら▲2三金△6二飛▲同馬△同金▲4一飛で、ソフトの評価値+1656で先手優勢。

この手順はうまくいきすぎですが、△2四同歩には▲2三金と重たく打つ手があり、△6二飛には飛車を取って▲4一飛が王手馬取りです。

この手順の▲2三金に△5八歩成なら、▲1二金△6八と▲同金引△7一銀打▲6二歩で、ソフトの評価値+1078で先手優勢。

この手順は▲2三金の△5八歩成からお互いに飛車を取り合う展開ですが、▲6八同金引とした形が味がよく、次に▲4一飛の王手馬取りがあります。

△7一銀打はそれを受けた手ですがそれでも▲6二歩の垂らしがあり、次に▲6一歩成が厳しいのですが△6二同銀としても▲同馬△同金▲4一飛で王手馬取りがあります。

▲2四歩に△6二銀なら▲2三歩成△5三銀▲1二と△7一銀打▲2八飛で、ソフトの評価値+704で先手有利。

この手順は△6二銀と馬をはじく手ですが、▲2三歩成があり以下角と飛車の交換になりますが、やはり▲4一飛の狙いがあり△7一銀打と先受けしても▲2八飛と今度は飛車を逃げて先手指せるようです。

意外なところから手を作るのが参考になった1局でした。

横歩取りの△3三桂型に▲4八銀

上図は、横歩取りから△3三桂と跳ねた局面。ソフトの評価値+167で互角。

横歩取りの△3三桂もたまに指される戦形で、横歩を取るとあまり指さない戦形になることがあるのが面白いところです。

横歩取りの場合は、▲3四飛と指した時に後手がどのような手でくるのかが一番緊張する場面です。

△3三桂だとやや持久戦模様となり、後手は振り飛車模様のような形になりやすいです。

ここで先手の手番ですが、たまに出る戦形だと指し手の手順がどうだったかを思い出すことになるのですが、何となくこんな感じだったかなという理解しかしていないので、指しなれていないと少しおかしな指し手の組み合わせになります。

本局もそんな感じで、実戦は△3三桂に▲3六飛と指しました。

▲3六飛△8四飛▲5八玉△2四飛▲2六歩で、ソフトの評価値+57で互角。

この手順は、▲3六飛として△7六飛を防いだのですが、△8四飛に将来△4五桂の筋が気になって早めに▲5八玉と上がり、そこで△2四飛と回ってきました。

飛車成りを受ける一手なので▲2六歩か▲2八歩ですが、▲2六歩と受けて4段目に歩を打って受けました。

この展開は、見たことがあるようなないようなはっきり覚えていない手順だったのですが、先手の3六の飛車と2六の歩の組み合わせはあまりよくないです。

ただし、▲2八歩より▲2六歩の方がよかったのでこれも1局ですが、すでに定跡からは少しはずれているようです。

最初の局面では▲3六飛では▲4八銀がありました。ソフトの評価値+167で互角。

最初の局面では、▲5八玉や▲3八金は見たことがあるのですが、▲4八銀は知りませんでした。

▲4八銀は5七の地点を補強しているのは分かるのですが、2筋が手薄になるのが気になります。

▲4八銀に△2八歩なら、▲2四飛△4五桂▲2八飛△3六歩▲8七歩△7六飛▲6八玉で、ソフトの評価値+435で先手有利。

この手順は、後手は△2八歩と分かりやすい手を指してきたのですが、▲2四飛が次に▲2三歩があります。

よって△4五桂と跳ねていきなり乱戦模様になるのですが、▲2八飛に△3六歩のような知っていないと指せないような手もあります。

△3六歩に▲8七歩と指して最後の▲6八玉で先手が少し有利になっていますが、初見ではとても先手が指せる感覚はなく、実感としては先手が少し悪いような展開の評価値でもおかしくないです。

最初の局面で▲4八銀だと乱戦になるので、▲5八玉の方が無難かもしれません。

やはり将棋は手が広く、序盤でも知らない手がかなりありそうで、本局もそんな感じでした。

横歩取りの△3三桂型の▲4八銀が参考になった1局でした。

桂馬を跳ねる前に歩を突き捨てる

上図は、相矢倉からの進展で△5五歩と突いた局面。ソフトの評価値+130で互角。

△5五歩はただの歩の突き捨てですが鋭い手で、▲5五同歩は△6五歩▲同歩△5五角▲6六金△4四角で、ソフトの評価値-145で互角。

この手順は、▲5五同歩とすると△6五歩から△5五角で後手の角が働きだし、▲6六金の受けに△4四角と引くと△2六角や△5六歩や△6五飛など、後手の指したい手がたくさんあり先手は神経を使います。

よって▲5五同歩とはしづらいのです、実戦は▲4五桂としました。

▲4五桂△4四銀で、ソフトの評価値-280で互角。

この手順は、▲4五桂と歩を取って桂馬を捌いたのですが平凡に△4四銀と受けられると、▲4六歩には△5六歩▲同金△5五歩のような手があります。

この▲4五桂もあまりいい手ではなかったようで、▲4五桂と跳ねても▲5三歩や▲3三歩の叩きの歩が打てないので、やや単調だったようです。

▲4五桂では▲3五歩がありました。

▲3五歩△同歩▲4五桂△4四銀▲3三歩で、ソフトの評価値+280で互角。

この手順は、▲4五桂と跳ねる前に▲3五歩と突き捨てる手で、△同歩としてから▲4五桂とします。

△4四銀と逃げるのは自然な手ですが、そこで▲3三歩と打ちます。

▲3三歩と打てるのは3筋の歩を突き捨てた効果です。

▲3三歩以下△同桂▲同桂成△同銀▲2四歩で、ソフトの評価値+257で互角。

▲3三歩の叩きに△4二金左と逃げる手もありますが、▲3五銀△4五銀▲2四歩△同歩▲1四歩△同歩▲1二歩△同香▲2四銀△2三歩▲1三歩で、ソフトの評価値+289で互角。

この手順は、後手は桂得になりますが、1筋と2筋の攻めをまともにくらうので桂得くらいでは受けるのは大変です。

▲3三歩のような叩きの歩には△同桂として桂馬の交換になるのが自然です。

以下▲同桂成△同銀に▲2四歩が継続の手です。

▲2四歩では単に▲3五銀もありますが、△3四歩▲4六銀で攻めが一段落します。

攻めの継続が難しいのであればこの指し方もありそうですが、▲2四歩で攻めが継続するのであれば指してみたい手です。

▲2四歩以下△同歩▲3五銀△3四歩▲2四銀△同銀▲同角△3五銀▲同角△同歩▲1四歩で、ソフトの評価値+610で先手有利。

この手順は、やや後手が受けに徹した手で、銀交換をして△3五銀に▲同角で角と銀の交換で先手が少し駒損ですが、▲1四歩と突く形で先手が少し指せそうです。

▲1四歩に△同歩なら▲1二歩△同香▲2四桂のような感じです。

桂馬を跳ねる前に歩を突き捨てるのが参考になった1局でした。

歩得を狙う△1四角の受け方

上図は、後手が角交換振り飛車からの進展で△1四角と打った局面。ソフトの評価値+26で互角。

△1四角はたまにでる手で、△3六角として1歩得をしてから3筋の歩を伸ばして、先手の3七の桂馬を攻める狙いです。

△1四角に▲1八角と受ける手はあるのですが、△3五歩▲同歩△4七角成の筋が気になります。

それで少し先手が指しにくいのかと思いましたが、他の手が見えなかったので▲1八角としました。

実戦は△1四角以下▲1八角△3五歩▲同歩△4七角成▲4八金△1四馬▲3四歩△3六歩で、ソフトの評価値-280で互角。

この手順は、△4七角成に▲4八金と受けて△1四馬に▲3四歩と先に桂取りにする手です。

▲3四歩に後手も△3六歩と打ちます。

実戦は、▲3三歩成△3七歩成▲同金△3三銀で、ソフトの評価値-426で後手有利。

この手順は、お互いに桂馬を取り合うのですが、先手は働きの悪い角に対して後手は馬でいつでも△6九馬とするような手もあるので後手の方がいいようです。

特に1八の角は狙いの少ない位置にいるので、活用する手順が見えません。

なお、手順の△3七歩成に▲4二ともありますが、△2八と▲5二と△同飛で、ソフトの評価値-725で後手優勢。

この手順は、飛車と金銀の交換で先手が駒得ですが、やはり1八の角の働きが悪く攻めが細いので後手優勢です。

やはり最初の▲1八角は悪かったようです。

▲1八角では▲5八金右がありました。

▲5八金右△3六角▲4六銀で、ソフトの評価値+64で互角。

この手順は、△3六角を受けずに▲5八金右と上がって△3六角に▲4六銀と活用する手です。

先手は1歩損になりましたが、後手は筋違い角で先手は持ち角なのでいい勝負のようです。

▲4六銀が少し意味が分かりづらいですが、3筋を補強する意味と▲6六角と打って次に▲4五桂△同桂▲2二角成を狙うような筋です。

▲6六角と打ったら△2一飛と引くような形ですが、将来的に△4四歩とか△8四歩は▲同角とされますので突きにくい意味があります。

▲4六銀に△4四歩なら、▲6六歩△4三銀▲6五歩△1四角▲6六角で、ソフトの評価値+45で互角。

この手順は、△4四歩と突いて△4三銀と銀を活用する手ですが、先手は6筋の位を取ってから▲6六角と打ちます。

以下後手から3筋の桂馬を攻めてくる筋が気になります。

▲6六角以下△2一飛▲2七飛△3五歩▲同銀△3六歩▲3四歩△3七歩成▲同飛△4五桂▲3九飛△3一飛▲4六歩で、ソフトの評価値-42で互角。

この手順は、先に後手が桂得する展開ですが後手は歩切れで、先手は▲3四歩と歩の拠点があるので評価値は後手が少しだけいいですがいい勝負のようです。

歩得を狙う△1四角の受け方が参考になった1局でした。

苦しい局面からの指し方

上図は、相掛かりからの進展で▲5五歩と突いたときに5四の角が△6五角とした局面。ソフトの評価値-401で後手有利。

この局面は、後手の飛車と角が働いており、また後手は3筋の位を取っているので後手が指しやすいようです。

後手からいつでも△4七角成と銀と刺し違える筋があるのと、8八の銀が壁なので先手はあまり強い戦いができないですが、ここからどうやって戦うかという局面です。

実戦は△6五角以下▲5六銀△同角▲同飛△6五銀▲4六飛△3六歩で、ソフトの評価値-1224で後手優勢。

この手順の▲5六銀は後手の角を取りにいった手ですが、だいぶ悪い手だったようで△同角から△6五銀が見えていませんでした。

△6五銀に▲4六飛としてどうするのかと思っていたら△3六歩がありしびれました。

△3六歩に▲同飛なら△3五銀打で飛車が取られます。

これらの手順は全く見えてなかったとはいえ一手ばったりみたいな展開なので、一直線に先手が悪くなりました。

さすがに後手に飛車を渡す展開になると先手玉が薄いので勝負になりません。

▲5六銀では▲7七桂がありました。

▲7七桂△同銀成▲同銀△2四桂で、ソフトの評価値-503で後手有利。

この手順は、▲7七桂と跳ねて遊んでいる桂馬を活用する手で、△同銀成と後手は銀と桂馬を交換する展開です。

再度の△2四桂は3筋の位を活かす手で、次に△3六歩と突く狙いです。

先手は攻め合いにならない形なので、受けに専念するしかありません。

△2四桂以下▲6六歩△4七角成▲同金△3六歩▲5四歩△同歩▲5三歩△4二玉▲3六金△同桂▲同飛で、ソフトの評価値-18で互角。

この手順は、▲6六歩と後手の角を取りにいって先手玉がしのげるかどうかという展開です。

後手は△4七角成から△3六歩と突いた局面は、角と桂馬の交換で先手が駒得をしていますが先手玉は薄いのでやや後手が指しやすいです。

△3六歩には▲5四歩から▲5三歩と8六の角を活かす手で、後手陣にあやをつける形です。

▲5三歩に△同金なら▲7二角で、ソフトの評価値+146で互角になりますので△4二玉とかわして、苦しいなりに先手もくらいつく形です。

先手としては後手の玉頭からあやをつける形であれば、実戦よりはるかによかったです。

苦しい局面からの指し方が参考になった1局でした。

柔らかい受け方で受ける

上図は、居飛車対振り飛車の対抗形からの進展で△6五銀と歩を取った局面。ソフトの評価値+319で先手有利。

対抗形で後手が△6五銀として角筋を通しながら6筋に圧力をかける展開で、よくありそうな局面です。

後手は4筋の歩を突き捨てているので1歩損になっていますが、6六の地点は後手の方が1枚多く利いています。

対局中はいい勝負かと思っていたのですが、ソフトは先手が少し有利とのことでした。

ただしこの先手有利というのは少し指しやすいという感覚で、ほとんど互角に近い形だと思います。

実戦は△6五銀以下▲6六歩△同銀▲同金△同角▲5一銀で、ソフトの評価値+277で互角。

この手順は▲6六歩と打つ手ですが、△同銀と取らせる展開です。

△6六同銀とされても元々は先手の1歩得だったのが損得なしになります。

以下金と銀の交換になり、そこで▲5一銀が割打ちの銀です。

これも先手の狙い筋で気持ちのいい手ですが、以下△2二飛▲6二銀成△同金で、ソフトの評価値+286で互角。

この手順は後手の守りの金を1枚はがして薄くすることで先手がだいぶ得したようですが、評価値は互角のようです。

このあたりの対局心理とソフトの評価値は少しずれているのが興味深いです。

なお最初の局面の▲6六歩では▲3七桂もあったようです。

▲3七桂△6六歩▲5七金△7六銀▲5五歩で、ソフトの評価値+289で互角。

この手順の▲3七桂は少し見えにくい手です。

後手に△6六歩と攻めの拠点の歩を打たれるためですが、そこで▲5七金とします。

形だけでいえば▲5七金では▲7七金寄としたいのですが、この場合は△8五桂があります。

▲5七金に△7六銀と進出して気持ちのいい形ですが、そこで▲5五歩が柔らかい受けです。

▲3七桂と跳ねた手は攻める手のようでも、▲5五歩として後手の角の利きを止めるのが大きいです。

▲5五歩以下△6七歩成▲同金寄△同銀成▲同金△7五金▲同角△同歩▲7四歩△8五桂▲7八金で、ソフトの評価値+227で互角。

この手順は後手は金と銀の交換から△7五金と打つ手で、角が逃げると△6六歩がうるさいです。

よって▲7五同角△同歩に▲7四歩と桂取りに歩を打って△8五桂に▲7八金がしぶといです。

この辺の指し手も微妙で、普通は角と金の交換で先手は大駒を渡すのは少し嫌な形の上に、▲7八金と打って穴熊を補強する指し手はやや先手が失敗しているように見えても、ソフトの評価値は互角のようです。

あまり指し手の流れを悲観するのでなく、客観的にその局面はどうなのかいう目線で見ると意外と評価値に近いような感覚になるかもしれません。

柔らかい受け方で受けるのが参考になった1局でした。

両方の桂馬を跳ねて駒組みをする

上図は、横歩取り青野流からの進展で△2三銀と上がった局面。ソフトの評価値+15で互角。

横歩取り青野流は▲3四飛の形から▲5八玉から▲3六歩と突いて激しい展開になるのが多いのですが、序盤で△2六歩と打って▲2八歩と受けた数手後に△2七歩成▲同歩とゆっくりした展開です。

そのような意味では厳密には青野流にはならないのかもしれませんが、とりあえず▲3四飛の形で▲5八玉から▲3六歩と突いたから幅広い意味で青野流ということでまとめています。

△2三銀は3二の金に紐をつけた手で、ここから先手がどのような構想で指すかという局面です。

ここは先手も手が広いのですが、2八の地点が空間になっているのでそれを補強する指し方をしました。

実戦は、▲4八玉△6二銀▲3九玉△1四歩▲7七角△5一金▲9六歩△4四角▲同角△同歩で、ソフトの評価値-202で互角。

この手順は、▲4八玉から▲3九玉と右に玉を囲うことで部分的には美濃囲いにする展開です。

右玉にするとやや左側が手薄になりますが、7八の金と7九の銀で守る形です。

先手は飛車を左側に移動させると振り飛車のような形になりますが、この展開が先手が得をしているかどうかは分かっていませんでした。

普通は▲5八玉のように中住まいにしてバランス重視で指すのですが、先手の飛車が窮屈で使いづらいです。

そのため振り飛車にして先手の玉を右側に移動すればどうかと思って指しました。

やや指しなれていない形なので感覚がつかめていないところはあったのですが、形勢は互角とはいえやや評価値が下がったようです。

角交換をしている形で、後手からの角の打ち込みが常に気になるのでそのあたりが少し評価値が下がっているのかもしれません。

ただし、振り飛車にすると評価値が200くらい下がることが多いので、振り飛車をたくさん指す人は気にするレベルではないと思います。

最初の局面では▲4八玉では▲7七桂がありました。

▲7七桂△6二銀▲3七桂で、ソフトの評価値-17で互角。

この手順は、2枚の桂馬を跳ねることでやや攻撃的な手です。

桂馬は後には戻れませんので、将来▲4五桂や▲6五桂と使うのが狙いになります。

しかし、ゆっくりした展開になると桂頭を狙われやすいので、やや急戦的な意味が強いです。

角交換をしていれば△2八角のような手がありますが、▲7七桂と跳ねて角交換にはならないので▲3七桂は成立しています。

後手は5三の地点を補強する意味で△6二銀と上がりましたが、その後は将来▲4五桂から▲6五桂を防ぐ意味で△6四歩から△6三銀△7四歩△7二金のように固める感じです。

ここからの指し方も手が広いですが、先手は飛車が活用できるかがポイントになりそうです。

両方の桂馬を跳ねて駒組みをするのが参考になった1局でした。

石田流の理想形に組ませると大変

上図は、居飛車対振り飛車の対抗形からの進展で△1二香と上がった局面。ソフトの評価値±0で互角。

後手は石田流に組んで理想的な駒組みに対して、先手は▲6五歩と突いた形で7七の角が3三の桂馬を睨んでいます。

対局中は、先手から動くのは難しいと思って5七の銀を引いて使うことにしました。

実戦は、▲6八銀△4二金▲7九銀△2四歩▲同歩△3六歩▲同飛△2四飛▲3三飛成△同金▲同角成△4四角▲同馬△同銀で、ソフトの評価値±0で互角。

この手順は、銀を引いて使うことで玉の守りを固くしたのですが、後手は△4二金と3三の桂馬に紐をつけてから△2四歩から△3六歩と仕掛けてきました。

△2四歩から△3六歩はこのような戦形でたまに出る手筋で、△2四歩▲同歩とさせていることで後から△2四飛とすることができます。

実戦の進行は、主導権のある後手が動いてきた展開で飛車と金桂の交換で2枚替えなので、ここから▲3六桂のような手もありますが、後手は飛車が2枚あるのも大きく互角のようです。

後手は2九の桂馬と1九の香車を取れば駒損が回復しますので、先手もあまり指したいような展開ではなさそうです。

▲6八銀では▲6六銀がありました。

▲6六銀△4二金▲7五銀で、ソフトの評価値+53で互角。

この手順は、▲6六銀から▲7五銀として上部の手厚くする手で、ぱっと見で意味が少し分かりづらいです。

▲7五銀とでると後手は玉も周辺の駒を上部に使いづらくなりますが、7五の銀の活用方法が少し分かりにくいです。

▲7五銀以下△2四歩▲同歩△3六歩▲同飛△2四飛▲3三飛成△同金▲同角成△4四角▲同馬△同銀で、ソフトの評価値+155で互角。

この展開は、先手の銀の使い方を除けば実戦と同じような手順ですが、最後の△4四同銀に▲2六歩と打ってどうかという感じです。

▲2六歩に△同飛なら▲1七角△2四飛▲2五歩△3四飛▲2四金△3五飛▲同角△同銀▲3四金で、ソフトの評価値+210で互角ですが、これも結構難しいです。

最初の局面で▲6八銀と▲6六銀で比較しましたが、あまり違いが分かりませんでした。

やはり後手に理想的な石田流に組まれると、そこから先手有利に進めるのは結構大変な感じです。

そうしてみると、この局面にならないように先手はどこかで早めに動くような感じにすべきだったようです。

石田流の理想形に組ませると大変なのが参考になった1局でした。

終盤の厳しい寄せ

上図は、相矢倉からの進展で▲4一銀と打った局面。ソフトの評価値-50000で後手勝勢。

▲4一銀は部分的にある手ですが詰めろになっておらず、先手陣は受けが効かない形なので形づくりに近い手です。

ここから後手がどのように寄せるかという局面です。

後手は飛車と桂馬2枚が急所に利いており、さらに持ち駒に角と銀とあるのでほぼ寄り形です。

ただ注意するのはたくさん駒を渡して、▲3二銀成から即詰みということくらいで、その展開にならなければ問題なさそうです。

実戦は▲4一銀以下△7七銀▲同金寄△同歩成▲同金△7六桂▲7八玉△8九角で、ソフトの評価値-99978で後手勝勢。

この手順は△7七銀と打って清算する手で▲同金の後の△7六桂が盤上の駒を活用する気持ちのいい手です。

△7六桂に▲同金なら△8七飛成▲7九玉△5七角▲6九玉△8九龍▲5八玉△7八龍▲4九玉△3九金▲5九玉△6七桂不成まで。

この手順は、△8七飛成▲7九玉に△5七角が厳しく▲6八金と合い駒をするのは△7八金までなので▲6九玉と逃げますが、△8九龍から龍で追って△3九金から△6七桂不成でぴったりです。

この詰み筋は決して簡単ではありませんが、一本道のようです。

よって△7六桂に▲7八玉と逃げたのですがそこで△8九角が強烈です。

対局中は、この時点でもまだ先手玉と即詰みか分かっていませんでした。

2八に飛車がいなければ△8九角に▲同玉は△8八金までですが、飛車がいるので少し複雑です。

△8九角に▲同玉なら△8八金▲同飛△同桂成▲同玉△8七桂成があります。

△8七桂成に▲同金なら△8九飛▲同玉△8七飛成以下詰みです。

△8七桂成に▲7九玉も△8九飛▲6八玉△7七桂成▲同玉△8七飛上成以下詰みです。

これらは一間龍の筋なのでぴったりです。

よって△8九角に▲6九玉と逃げますが、△6八金▲同飛△同桂成△6七角成▲同金△8八飛で、ソフトの評価値-99988で後手勝勢。

この手順は△6八金から清算して後手は飛車を取る形ですが、そこから△6七角成▲同金に△8八飛が少し浮かびにくい手の流れで、全く見えていませんでした。

△8八飛に▲5九玉は△6七桂不成以下詰み、また△8八飛に▲5七玉も△6七桂成▲同玉△8七飛上成以下詰みです。

また△8八飛に▲7八桂は△同飛成▲同玉△8七飛成▲7九玉△7八歩以下詰みです。

よって△8八飛には▲6九玉ですが、△7八飛成▲同玉△8七飛成▲7九玉△7八歩▲6九玉△6七龍▲6八金△5八金まで。

これらの筋で先手玉はぴったりのようです。

なお厳密には最初の局面の△7七銀に▲7九玉△7八銀成▲同飛で先手玉に即詰みはありませんがこの場合は△6七桂成で、ソフトの評価値-50000で後手勝勢です。

終盤の厳しい寄せが参考になった1局でした。

8筋の殺到をどのように受けるか

上図は、相掛かりからの進展で△5四角と打った局面。ソフトの評価値-118で互角。

△5四角は次に△8七銀成と殺到する手が狙いですが、先手は受けるか攻め合いにでるかという局面です。

実戦は▲8六角△3五歩▲4五歩で、ソフトの評価値-331で後手有利。

この手順は、▲8六角と打って△8七銀成の筋を消したのですが、あまり働きのいい角とはいえず受け一方の意味合いが強いです。

なお、▲8六角は候補手にも上がっていませんでした。

後手は△3五歩と手を戻して先手は▲4五歩として飛車の横利きを通しましたが、評価値は後手有利のようです。

後手は8筋でポイントを上げて、さらに△3五歩とすると将来△3四銀から△3三桂のような駒を活用することもできるので、手が広がっている感じです。

▲8六角と打つとすぐに先手が負けるということはありませんが、主導権は後手にあるのでやや面白くなかったようです。

▲8六角では▲4五桂がありました。

▲4五桂△4四銀▲3四歩△8七銀成で、ソフトの評価値-497で後手有利。

この手順は、▲4五桂と銀取りに跳ねる手ですが、△4四銀に8筋を受けずに▲3四歩と取り込んで△8七銀成と進みます。

▲3四歩と取り込んでもまだ大したことはないのに、後手の△8七銀成は厳しいです。

この展開で先手に返し技があるかが気になります。

△8七銀成以下▲同銀△同角成▲8二歩△同飛▲7一銀△8六飛で、ソフトの評価値-490で後手有利。

この手順は、▲8七同銀△同角成に▲8二歩から▲7一銀の割り打ちの銀を打つのは狙いの1手ですが、△8六飛と浮かれて少し先手が苦しいようです。

△8六飛以下▲6二銀成△同玉▲7七角△同馬▲同桂△8九飛成▲7九歩で、ソフトの評価値-472で後手有利。

この手順は、▲7七角と打つのは粘りのある手ですが、あっさりと△同馬と取ってから△8九飛成が厳しいです。

△8九飛成に▲7九歩と底歩で辛抱して、先手は▲4一角を含みに粘る感じですが先手が苦しいです。

最初の局面で▲8六角と打って受けだけで辛抱する展開と、▲4五桂と跳ねて△8七銀成を許す展開を比較すると、評価値はそんな変わりはなくどちらも後手有利です。

そうであれば▲8六角はそこまで悪くなかったということになりますが、長期的な目線でみれば8六の角は使いづらく損であるので候補手にも上がっていなかったということかもしれません。

やはり最初の局面のように、△7六銀の形から△5四角と打たれると先手の模様が悪いようです。

8筋の殺到をどのように受けるかが参考になった1局でした。