上図は、角換わり腰掛銀からの進展で△4五銀と桂馬を取った局面。ソフトの評価値+1173で先手優勢。
駒の損得はありませんが、この局面はすでに先手優勢だったようです。
お互いの玉がそれなりに固く駒の損得がないとぱっと見でいい勝負に見えるのですが、こういうところでも強い棋力の人が見るとすでに差があるようです。
自分は対局中はそこまで先手がいいとは思っていませんでした。
すでに形勢がいい局面ではいい手を指すと、さらに形勢がよくなることが多いです。
将棋は相手玉を詰ませば勝ちになりますが、相手玉を詰ませなくても駒得を目指して戦力を増やすことで優勢を拡大する指し方があります。
本局もそのような指し方がありました。
実戦は▲4五同銀△同歩▲4四桂で、ソフトの評価値+249で互角。
この手順は▲4五同銀と銀交換をしてから▲4四桂と両取りの金を打つ手です。
相手玉を攻めるならこの手順が自然なようで、桂馬と金の交換になれば先手が駒得になり優勢が拡大したようにも見えます。
相手の守り駒の金を1枚でも取ると相手玉が薄くなるので、攻めている分には気持ちがいいのですが、評価値は大きく下がりました。
なぜ下がったかですが、自分が攻めても相手も攻め駒が増えており、特に後手は4六の角が働いています。
先手玉が6八にいるので角の利きが間接的に玉を睨んでおり、△5六桂のような手があります。
この実戦の攻め合いの手順は、先手の自玉の危険をおかして攻めにいったという手でリスクが高いです。
最初の局面も後手の4六の角は働いているのですが、この評価値は先手がうまく対応すれば優勢という評価値です。
先手としては4六の角を消せば自玉が今より安全になります。
ここでは自玉を安全にして優勢を拡大するという指し方がありました。
▲4五同銀では▲4六飛がありました。
▲4六飛△同銀▲2四角△3三銀▲4六角で、ソフトの評価値+1299で先手優勢。
この手順は、▲4六飛と飛車と角の交換をしてから▲2四角と王手銀取りに打つ手です。
▲4六角の瞬間の駒割りは飛車と角銀の交換の2枚替えなので先手が駒得です。
さらに▲4六角が飛車取りの先手になっているのも大きいです。
ただし後手の持ち駒に飛車が入ったので、先手はいずれ飛車の打ち込みに対応することになります。
それまでに先手が手を作れるかが気になります。
▲4六角に△8一飛なら▲6四桂△5一金▲7三桂成△4九飛▲6三角△4六飛成▲4七銀打で、ソフトの評価値+1267で先手優勢。
この手順は△8一飛と逃げれば▲6四桂と金取りに打つのがうまいです。
安い駒で相手の守り駒の金を攻めるのが急所です。
▲6四桂に△5一金と逃げましたが、△5一金で△6二金なら▲7三桂成△同金▲5二桂成△同玉▲7三角成があります。
よって△5一金と逃げましたが、そこで▲7三桂成がゆっくりしているようで手厚い手のようです。
一見遅いような攻めでも盤上の駒を攻めに使って手厚く指すの本筋のようです。
後手は△4九飛と打って先手も少し嫌な形ですが、角を逃げずに▲6三角が継続手です。
▲6三角に△4六飛成と角を取りましたが、そこで▲4七銀打と手厚く受けるのがうまいです。
▲4七銀打で▲8一角成と飛車を取るのは、△4九龍と入られて大変です。
受けるところはしっかり受けて自玉を安全にするというのが大事なようです。
なお▲6三角に△8四飛と逃げるのは▲7四成桂△8二飛▲7二桂成△9二飛▲7三角成で、ソフトの評価値+2219で先手勝勢。
この手順は△8四飛と逃げた手に▲7四成桂と飛車を攻めるのが効果的で、次に▲5位一馬~▲5二金の狙いと、▲8三成桂と飛車を取る手があり先手勝勢のようです。
駒得を図って優勢を拡大するのが参考になった1局でした。