上図は、先後逆で後手横歩取り△3三角型からの進展で▲6六歩と突いた局面。ソフトの評価値-140で互角。
横歩取りの戦型は大駒が持ち駒になった急戦型のような激しい戦いもあれば、相振り飛車のような形になることもあり相手の手によって戦型の幅が広いです。
先手が早めに▲7七桂と跳ねて角交換の筋がなくなったことから本局のような進行になりました。
先手は金無双のような構えで2八の銀は後手の端攻めを受けています。
それに対して後手は玉を中住まい横歩取りによくある形です。
先手が▲6六歩と突くと一瞬先手の飛車の横の利きが止まるので、この瞬間に後手は動くチャンスでした。
実戦は△2五桂▲6五歩で、ソフトの評価値+103で互角。
この手順は△2五桂と跳ねて端攻めを狙う手です。
1七の地点に殺到する狙いで、後手は角と2五の桂馬と1五の歩と1九の香車で端を狙っています。
それに対して後手は2八の銀と2九の桂馬と1九の香車で端を受けています。
▲6五歩に△1七桂成としたくなりますが、▲同銀△1六歩▲2八銀△1七歩成▲同香△同香成▲同銀△同角成▲同桂で後手は無理攻めです。
この桂馬を捨ててからの展開は、攻めは3(角と香車と歩)で受けは3(銀と桂馬と香車)で同じ数なので先に攻める方が無理です。
△2五桂と跳ねても無理だったらその手を保留して、別の構想で指すべきだったようです。
△2五桂では△9五歩がありました。
△9五歩▲同歩△3六歩で、ソフトの評価値-104で互角。
この手順は9筋の歩を突き捨ててから△3六歩と合わせる手です。
ぱっと見で意味が分からなかったのですが、後手は飛車交換に持ち込みたい意図です。
△3六歩に▲同歩なら△同飛▲3七歩△6六飛▲同飛△同角のような狙いです。
このときに9筋の歩を突き捨てていると次に△9五香と走る手があり、▲8六角なら△9九香成のようなイメージです。
単純に飛車交換をするのでなく、9筋にあやをつけておくことで攻める手が広がってきます。
9筋の突き捨ては後手の大駒がいる反対側の端歩なので、攻める方としては見えづらいです。
将棋は81マスの端にある香車を含めた全体を見て考えるというのがありますが、本局のような手の作り方もそれを意識しないと浮かびません。
△3六歩以下▲同歩△同飛▲3七歩△6六飛▲同飛△同角▲2六飛△4四角▲2一飛成△3一飛で、ソフトの評価値-239で互角。
この手順は飛車交換から▲2六飛と打つ手で△4四角に▲2一飛成とする展開です。
2一の金が浮いているので金取りになるのですが、そこで△3一飛が盲点です。
△3一飛では△3一歩の底歩が最初に浮かびますが、▲8八角と辛抱されると後手から手を作るのが難しくなります。
△3一飛に▲2四龍と逃げるのは△9八歩▲同香△9五香で後手の攻めが成功します。
△3一飛の局面はまだ大変ですが、後手が手を作って動いたというのは参考になります。
△3六歩に▲6五歩なら△3七歩成▲同銀△5五角▲3六歩△2五桂▲2八銀△1六歩▲同歩△1七歩で、ソフトの評価値-446で後手有利。
この手順は先手は▲6五歩と辛抱した手で、この展開は飛車交換にはなりません。
後手は△5五角とするのがうまい手で、次に△2五桂がうるさいです。
▲3六歩は後手の飛車の利きを止めたのですが、それでも△2五桂があり▲2八銀には後手は1筋から歩を使って攻める形です。
先手が▲3六歩と打ったことで今度は先手の飛車の横の利きが止まったので、1筋の攻めができたという展開です。
端を突き捨てて飛車交換を狙うのが参考になった1局でした。