自陣に手を入れてバランスをとる


上図は、角換わり▲4五桂型からの急戦で△2九飛と打った局面。ソフトの評価値+331で先手有利。

先手が序盤で飛車を銀の駒損から攻めて、その後飛桂と銀銀の交換になりました。

駒割りはいい勝負ですが、後手が△2九飛と打ってきてここが勝負どころです。

こういうところからのミスは取り返しがつかないことが多く、特に飛車を打たれてそこそこ危ない形なので精度のいい手を指してバランスを保たないといけないです。

しかしここからの指し手はお粗末でした。

実戦は△2九飛以下▲4七角△1九飛成▲8三銀△6二飛で、ソフトの評価値-626で後手有利。

ここからの手順はさすがにひどすぎで勘違いと言えばそれまでですが、▲4七角と打って▲8三銀と打てば8二の飛車が取れるとばかり思っていました。

飛車が取れるけど後手からも△4八香以下攻め合いの筋があるので結構先手も危ないななどと思っていましたが、▲8三銀に△6二飛がありました。

△6二飛は普通の手ですがなぜか△6二飛が全く見えておらず、▲8三銀はポカとは違った意味の凡ミスです。

このような類のミスというのは、将棋の中では結構少ないのかなと思っています。

盤面の7筋と8筋だけ見て6筋を見ていなかったようで、このような手の流れになりますともうどうしようもありません。

先手は後は粘るだけなので、後手のミス待ちの将棋になりそうです。

▲4七角では2通りの指し方がありました。

1つは▲3八銀です。

▲3八銀△1九飛成▲2一歩成△5三香▲6八玉△2八桂成で、ソフトの評価値+269で互角。

この手順は▲3八銀と打って自陣を固める手です。

▲3八銀と自陣に金駒を打ってそれが飛車取りになりますので手順に堅くなりますが、△1九飛成▲2一歩成に△2八桂成が銀取りになるのでこの受け方が少し悩みます。

後手から次に△3八成桂▲同金として△4九角~△6七角成の筋を防がないといけません。

△2八桂成以下▲同銀△同龍は、次に後手から△4七角が厳しいのでそれを受ける必要もあります。

△2八桂成以下▲同銀△同龍▲2九歩△1七龍▲5八銀で、ソフトの評価値+115で互角。

この手順の最後の▲5八銀は5七の地点を補強する受けで、金駒を自陣に投入するので攻め駒は少なくなりますが、先手は角桂桂歩があり1一の香車が取れる形なのでまずまずのようです。

もう1つは▲4七角で▲2一歩成です。

▲2一歩成△1九飛成▲3九歩で、ソフトの評価値+476で先手有利。

この▲2一歩成~▲3九歩は1段目に歩を打って相手の龍の利きを止める形です。

1段目の歩は守りが堅くなりますが、金駒を増やす受け方でないので後手から攻めてくる手が気になります。

▲3九歩以下△4七香▲3八金△4八香成▲同銀△同桂成▲同玉△3六歩▲5六香△5三歩▲2五角△4三角▲6三銀△4二玉▲5三香成△同玉▲5四銀△同角▲同銀成△同玉▲6六桂△5三玉▲6一角成で、ソフトの評価値+3220で先手勝勢。

この手順はうまくいきすぎのところはありますが、後手が△4七香と空間に香車を打ち込んできました。

安い駒で相手の守りの金を攻めるのは結構嫌な形です。

△4七香に▲3八金として以下△4八香成から清算する手順で、先手は守りが薄いので対応が難しいのですが最後は▲4八同玉とするのが興味深いです。

△3六歩と突いたらそこで▲5六香~▲2五角と反撃に転ずるのが厳しく、こういう指し回しというのが結構難しいです。

以下▲6三銀~▲5三香成も気がつきにくい手で、やはり手が見えると見えないとでは全く形勢が変わってくるようです。

自陣に手を入れてバランスをとるのが参考になった1局でした。