上部脱出を防ぐ銀打ち

上図は、角換わりからの進展で△2三桂と金を取った局面。ソフトの評価値+50000で先手勝勢。

対局中は何か変な寄せ方で局面の流れがまずいと思っていました。

局後に評価値を見てみると50000でほぼ必勝形だったのですが、気持ちに余裕がないとこのような局面からもおかしくなるのが将棋の難しいところです。

実戦は▲3一銀△3三玉▲4三香成△3四玉で、ソフトの評価値+1231で先手優勢。

この手順の▲3一銀は玉は下段に落とせの手で△同玉なら▲4三香成がうまいのですが、△3三玉と逃げ▲4三香成に△3四玉と上部に逃げる形です。

上部に逃げるのを防ぐ駒が少ないのでいかにもおかしな寄せ方で、これでまた勝負が振り出しに戻った感じです。

詰将棋とは違うような寄せの段階でこういうところをちゃんと寄せる形にしないと、勝てる将棋も勝てなくなります。

▲3一銀では▲4五銀打がありました。ソフトの評価値+50000で先手勝勢。

この▲4五銀打は上部に脱出するのを防ぐ手で、後手の1八の角の利きを止めたような意味もあります。

ここに銀を打つと上部からの攻めが手厚くなるので安心感があります。

▲4五銀打に△2八飛なら▲3四桂△3二玉▲4三香成△同玉▲4四歩△3二玉▲4三金△3一玉▲4二金まで詰みです。

この手順の▲3四桂に△5一玉なら▲4三香成△4八飛成▲7七玉で、後手玉は受けなしで先手玉は不詰みなので先手勝勢です。

△2八飛に▲3八歩とか受けるのでなく、▲7七玉として不詰みだと考えるのが大事なようです。

終盤は駒得より速度なので、こういうところもできるだけ精度のいい手を指したいです。

▲4五銀打に△3二金なら▲4三香成△同金▲4四歩△3三金▲3四桂△同金▲4三金△3一玉▲3四銀で、ソフトの評価値+50000で先手勝勢。

この手順の△3二金には平凡に▲4三香成~▲4四歩が決め手で、以下▲3四桂~▲4三金~▲3四銀で金を補充して先手勝勢です。

▲4五銀打に△3九飛なら▲4三香成△同玉▲4四歩△3三玉▲7一龍△同角▲3四歩で、ソフトの評価値+50000で先手勝勢。

この手順の△3九飛は▲3四桂に△同飛成の受けを用意したのと同時に、先手玉を下から攻める筋もあるので先手としてもここは慎重になります。

△3九飛には▲4三香成~▲4四歩で△3三玉に▲7一龍が決断の手になります。

飛車を渡す形で将来△6九飛打のような筋が生じますので少し危険になりますが、▲7七玉とする形はかなり持ち駒がないと先手玉は寄らない形です。

△7一同角に▲3四歩で玉が逃げるのはどこに逃げても詰みです。

▲3四歩以下△同飛成▲4二銀△2二玉▲1二金△3二玉▲3四銀△4二玉▲4三歩成△4一玉▲5二桂成△3一玉▲2一成香まで詰みです。

この手順は△3四同飛成にそこで▲4二銀と玉を下段に落とす手で、以下龍を取って寄りです。

これらの手順を見ると▲4五銀打で以下寄っていたので、このような手は今後は逃さないように気をつけたいです。

上部脱出を防ぐ銀打ちが参考になった1局でした。

相手の攻めを見切って決めにいく

上図は、横歩取りからの進展で△8五飛と打った局面。ソフトの評価値+2234で先手勝勢。

先手が桂得して持ち駒に飛車があるので先手がいいです。

先手は1一に馬がいて8八の地点に利いていますが、いつでも後手から△8八歩成▲同銀△6七角成▲同金△8八飛成のような筋が気になります。

対局中に形勢がいいと思っているとつい安全に指したくなります。

それがいい方向にでればいいのですが、決めるべき局面で決めにいかないと手数が伸びて少しずつあやしくなることがあります。

本局は△8五飛に▲6八玉と安全に指したつもりが疑問手だったようで、ソフトの評価値+1420で先手優勢。

▲6八玉には△3三桂と跳ねて、取れる形の桂馬に逃げられて先手はだいぶ損をした感じです。

▲6八玉では▲1二飛がありました。ソフトの評価値+2254で先手勝勢。

この手順は▲1二飛として局面を決めにいきます。

先手の狙いは次に▲2一馬から飛車と馬を使って相手の金駒を取りにいきます。

後手はこれが分かっていても受ける手がないようで、▲1二飛に△3三桂としても▲同馬と取られてしまいます。

▲1二飛以下△5一金▲2一馬△8八歩成▲3一馬で、ソフトの評価値+2957で先手勝勢。

この手順の△5一金は受けに回った手ですが、▲2一馬と桂馬を補充します。

先手の馬の利きがそれたことで△8八歩成として、▲同銀なら△6七角成▲同金△8八飛成を目指します。

それでも先手がいいのですが、△8八歩成に▲3一馬とするのが早いようです。

相手の攻めを見切って決めにいくことで局面を分かりやすくする方向にもっていきます。

▲3一馬に△7九となら▲3二飛成△4二銀▲同馬△同金▲4一銀△6一玉▲4二龍で、ソフトの評価値+50000で先手勝勢。

この手順は△7九とには▲3二飛成以下寄せが決まる展開で、▲4二龍となった局面は後手は受けなしです。

△1五角や△8六角の王手龍取りで龍を抜く筋もありませんので受けがありません。

▲3一馬に△7八となら▲3二飛成△6一玉▲6四桂△同歩▲6三銀△5二金打▲4一馬で、ソフトの評価値+50000で先手勝勢。

この手順は▲3二飛成△6一玉に受けに回るのでなく、▲6四桂~▲6三銀と決めにいきます。

どちらも詰めろなので後手は受けるだけになりますが、△5二金打としても▲4一馬で後手は金駒がありませんので受けがありません。

最近将棋を指していると、勝勢の局面から甘い手を指して形勢が振り出しに戻るということがよくあります。

決めに行く局面で甘い手を指すともつれることがあるので気をつけていはいるのですが、そのときの心理状態などでうまく指せないことがあるので、ここらへんを乗り越えたいです。

本局は強い人から見れば当然の手の流れでしょうが、自分には指せなかったのでこの局面を取り上げました。

相手の攻めを見切って決めにいくのが参考になった1局でした。

2筋の香車に受けるかどうか

上図は、先後逆で居飛車対振り飛車の対抗形からの進展で▲2六香と打った局面。ソフトの評価値-116で互角。

対抗形から振り飛車側が▲2六香と打って▲2三香成を狙う形はたまにでます。

特に1段目に飛車がある場合はそれに対して居飛車側は受けることが多いのですが、本局のような場合はどうなのかという形です。

駒の損得はなく、次に▲2三香成△同玉▲3一龍がどの程度厳しいのか、また受けた場合はどうなのかが気になります。

対局中は受けた方が無難と思いました。

実戦は△2四歩だったのですが、変化手順で▲6五桂でソフトの評価値+498で先手有利。

この手順は△2四歩と突いて、▲同香なら△2二歩と下から歩を打って受けるつもりでした。

実戦は△2四歩に変化手順ですが▲6五桂と跳ねる手がいい手だったようで、直接的な手ではありませんが次に▲5四歩△同歩▲5三歩の叩きが厳しいです。

遊んでいた桂馬が活用できそうな形で、これは振り飛車の理想的な展開だったようです。

なお△2四歩に▲同香と取るのはあまりいい手ではないようで、▲同香には△2六歩▲同歩△7六歩として将来△2七歩の叩きで勝負するのがよかったようです。

2六に香車がいることで△2六歩の叩きを消しているとも言えます。

△2四歩では△7六歩がありました。ソフトの評価値-83で互角。

この手順は△7六歩と取り込む手で、後手の理想は△7七歩成~△6八とですがさすがに手数がかかるのでこの瞬間の先手の手が気になります。

△7六歩に▲6五桂なら△7七歩成で、ソフトの評価値-193で互角。

この手順は▲6五桂に△7七歩成として攻めを継続します。

△7七歩成に▲5九銀と逃げるのは危険で、△2七桂成▲同玉△2六角▲同玉△3五銀▲2五玉△2四香▲3四玉△4四銀で、ソフトの評価値-50000で後手勝勢。

この手順はうまくいきすぎですが、▲5九銀とすると後手の龍が先手玉を直通する形になるので△2七桂成~△2六角があります。

△7七歩成に▲4五歩なら△3三角▲5九銀△4七銀▲同金△同桂成▲4八銀打△同桂成▲同銀△6七とで、ソフトの評価値-484で後手有利。

この手順は▲4五歩△3三角として後手から△2六角のような手を消してから▲5九銀と受けに回りますが、△4七銀からくいついて後手が少し指せているようです。

ただし、いつでも▲2三香成の筋があるのでこれも結構大変です。

△7六歩に▲2三香成なら△同玉▲3一龍△3二銀▲3六歩△6八と▲2五銀△2四歩▲3四銀△同玉▲3五歩△2三玉で、ソフトの評価値-903で後手優勢。

この手順は▲2三香成~▲3一龍は狙い筋ですが、△3二銀と受けられるとその後が意外と手がありません。

先手の持ち駒は銀と歩なのですがやや駒不足のようです。

以下▲4五歩~▲3六歩として3五の桂馬を取りにいくますが、3六の地点があくと後手から△3六桂のような手もあるので少し指しにくいです。

よって▲2五銀として3六の地点を補強しましたが、△2四歩と催促して後手が少し指せているようです。

本局は2筋を攻められても後手の持ち駒に銀があるのと、4四に角がいるので2二の地点の受けが可能で意外としっかりしていたようです。

今回はややレアケースだったようですが、2筋は受けなくてもいいという形でした。

2筋の香車に受けるかどうかが参考になった1局でした。

序盤の早い段階での疑問手

上図は、先後逆で横歩取り△3三角型からの進展で▲3八金と上がった局面。ソフトの評価値+2で互角。

この局面で▲3八金とこのタイミングで上がったのはあまり見たことがなかったのですが、実戦はここで△7六飛と歩を取りました。

これで歩の損得はなくなったのですが、ソフトはこの手を疑問手と言っていました。

横歩取りの戦型で後手番でも△7六飛と横歩を取ることはよくありそうですが、正直疑問手の意味がよく分かっていませんでした。

自分は相居飛車の将棋については内容が悪く、対抗形に比べるとだいぶ勝率が悪いと思っています。

正確に数値化して調べて言っているのではありませんが、感覚的に相居飛車の将棋で手ごたえのある将棋を指したのが少なく、気がついたら作戦負けや無理筋で攻めていたというのが多いです。

何が原因か分かってなく同じことを繰り返している可能性があり、結局それを解決するにはどこが悪かったか調べるしかありません。

▲3八金はまだ19手目の指し手なので、20手目で疑問手を指すようではちょっと苦しくなります。

今までたくさん将棋を指してきましたが、まだまだ知らないことが圧倒的に多いです。

実戦は△7六飛で以下変化手順で、▲3三角成△同桂▲8四飛△8二歩▲7七桂△7四歩で、ソフトの評価値+49で互角。

この手順は△7六飛以下は変化手順で、先手は角交換をしてから▲8四飛とします。

後手は△8二歩と受ける形で、以下▲7七桂に△7四歩と突く形です。

この手順でいくつか気になることがあります。

1つは先手から▲3三角成と角交換をする手です。

横歩取りの戦型で角交換をするのは、相手が手得するのでできればあまりしない方がいいのかと思っていました。

よく横歩取りの持久戦でお互いに角が向かい合ったままで、角交換をなかなかしないという展開があり、これもそのような意味かと思っていました。

2つ目は△8二歩と打つ形です。

昭和や平成の感覚では△8二歩と2段目に歩を打って受けるのはあまりいい形ではないという理解でしたが、その後令和になると△8二歩とか△2二歩とか自分から受けるような感覚の手も見受けられるようになり、そのあたりが局面によって微妙に味が違うようです。

本局の変化手順では△7一銀の形で△8二歩と受けると、7一の銀が使いづらく銀を使うためには△7二金と8二の歩にひもをつける必要があります。

3つ目は△7四歩と突く手です。

この手は以前もこのような手があると調べていたのですが、感覚的に最初に浮かばないことが多く、指摘されて初めて見える手です。

△7四歩と突くことで先手に▲2四飛とさせないとか、△7三桂と活用できるという意味があるようです。

△7四歩と突いても形勢は互角なので、最初の局面図で△7六飛が疑問手と言ってもなかなか理解できないところはありますが、多分強い将棋AIも疑問手と判定する可能性が高いと思っています。

△7六飛では△7二銀がありました。

△7二銀▲3六歩△7四歩▲3七桂△7六飛で、ソフトの評価値+92で互角。

この手順は△7二銀とする手で、最近の後手の横歩取りは△7二銀型で短い手数で玉の整備をすることが多いです。

△6二銀△7二金型より△7二銀型の方が1手省くことができます。

先手は▲3六歩としましたが、そこで△7四歩と突くのも興味深いです。

△7四歩に▲同飛は△7七歩がありますので先手は取ることができません。

よって▲3七桂としましたが、そこで△7六飛としています。

この形は先手に▲8四飛と回らせないように、後手は8筋にできるだけ飛車をいる形に辛抱しました。

それにより△8二歩と受けるのでなく持ち駒に3歩ある形になります。

これも互角の展開ですが、このようなちょっとした違いでも何か考える材料ができるというのはいいことなのかもしれません。

序盤の早い段階での疑問手が参考になった1局でした。