形を崩してから飛車を打ち込む


上図は、後手横歩取り△3三角型からの進展で△6二金と上がった局面。ソフトの評価値+

先手が▲3五角と打って5三の地点に駒を足して攻めてきた手に、6一の金が△6二金と上がりました。

▲3五角では▲8三角と打つ方がよかったようで、以下△7二銀▲5三桂右成△同銀▲同桂成△同角▲8二飛で、ソフトの評価値+386で先手有利でした。

実戦の▲3五角はやや狙いが単調だったようで、ソフトの候補手にも上がっていませんでした。

また後手の△6二金も自然な受けだと思っていたのですが、この手もソフトの候補手に上がっておらず△6二銀を推奨していました。

△6二銀は8筋の方が弱くなるので指しづらかったと思いますが、このあたりは人間の感覚と違っており読みが入っていないと△6二銀は指しづらいです。

△6二金と受けたことで▲3五角が働きのいい角になったようで、結果的に先手の手が有効になったようです。

5三の地点は攻めが角と桂馬2枚の計3に対して、後手の守りが玉と角と金と銀の計4なので数の上では先手の攻めは足りていません。

先手から攻めると5三の地点は2対4になるので、普通は先手が駒損になります。

ただし、5三以外の地点で後手に隙ができると、戦線拡大で先手の攻めが続くケースがあります。

こういうのがあるので、できるだけ盤面全体を見た方がいいです。

実戦は△6二金に▲8四飛△8二歩▲7四飛△7二銀で、ソフトの評価値+80で互角

この手順は先手の失敗で、敵陣に打つ飛車でなく生飛車なのでよほどいい条件でないと攻めの手の継続が難しくなります。

対局中は△7二銀を軽視しており、後手の陣形が立ち直った形なので先手の攻めは面白くなかったです。

▲8四飛では▲7二歩がありました。

▲7二歩△同銀▲5三桂右成△同銀▲同桂成△同角▲同角成△同金▲8二飛で、ソフトの評価値+1053で先手優勢。

この手順は▲7二歩と打つ手で、△同銀と取らせることで後手の守りが薄くなります。

▲7二歩に△同金なら▲5三桂右成△同銀▲同桂成△同角▲同角成△同玉▲5一飛で、ソフトの評価値+708で先手有利。

この手順は▲7二歩に△同金なら5三の地点の守りが後手は1枚弱くなるので、5三の地点で清算してから▲5一飛で先手有利です。

よって△7二同銀としたのですが、5三の地点で清算してから▲8二飛と打つのが△7二同銀とさせた効果です。

駒割りは銀と桂桂の交換ですが、▲8二飛と打ったときに後手の受け方が難しいです。

後手は5三の金が受けにあまり利いていないのが痛く、持ち駒に金駒がないので飛車にアタックするような受けがありません。

▲8二飛以下△9四角▲8五銀△6一玉▲9四銀△同歩▲7三歩△同桂▲8一角で、ソフトの評価値+1881で先手優勢。

この手順は△9四角と打って7二の銀にひもをつけると同時に△6六桂を狙った手ですが、▲8五銀とここに金駒を打って攻めるのが少し浮かびにくいです。

敵陣に金駒を打つのは考えやすいのですが、中段に金駒を打つと働きが決していいとは言えないので浮かびにくいというのがあります。

ただしこの場合は、▲8五銀に△8三角と逃げても▲8四歩で後手は収拾がつかないので▲8五銀は有効なようです。

▲8五銀に△6一玉と7二の銀にひもをつけましたが、▲9四銀△同歩に▲7三歩が細かい手です。

▲7三歩に△同銀は▲8一飛成や▲3二飛成があるのは分かりますが、△同桂と取った次の手が難しいです。

△同桂と取ると将来△6五桂~△5七桂成のような筋が生じますので、先手としても読みが必要です。

△7三同桂には▲8一角と打つのが△7三同桂とさせた効果で、8一の地点に空間をあけることで▲8一角と打てます。

▲8一角以下△7一銀▲7二角成△同銀▲8一銀で、ソフトの評価値+2084で先手勝勢。

この手順は△7一銀には▲7二角成~▲8一銀が決め手で、△8三角と受けても▲8四歩があります。

ややうまくいきすぎたところはありますが、狙いとしては分かりやすかったと思います。

形を崩してから飛車を打ち込むのが参考になった1局でした。