細い攻めから大駒を活用する

上図は、居飛車対振り飛車の対抗形からの進展で△6五銀と歩を取った局面。ソフトの評価値+971で先手優勢。

駒割りは桂馬と香車の交換でほぼ互角ですが、先手は玉の堅さが活きる展開で先手優勢のようです。

自分の将棋は終局後にソフトで検討しているのですが、中盤でかなり優勢になってもそこから疑問手を重ねて気がつけば互角になっていたということが多いです。

優勢の局面はうまくいけば勝勢になるのですが、戦いが振り出しに戻るのはもったいないです。

中盤で精度の悪い手は大きく評価値が下がりやすいので、このあたりの手の見え方は大事です。

実戦は▲7四桂△同銀▲同歩△同金▲6三歩△同金▲5二桂成で、ソフトの評価値+454で先手有利。

この手順は▲7四桂と両取りに打つ手で以下▲5二桂成ともたれる指し方です。

もともと先手は大駒があまり働いていないのでどうしても細い攻めになるのですが、銀と桂馬の交換で先手歩切れでどうかという形です。

後手も上部は手厚いので先手も手を作るのが大変です。

▲7四桂では▲6六歩がありました。

▲6六歩△5四銀▲7四桂で、ソフトの評価値+959で先手優勢。

この手順は▲6六歩と打って△5四銀に▲7四桂と両取りに打つ形です。

実戦と似たような形ではあるのですが、大きく違うのは部分的には金と桂馬の交換になるということです。

一般的に銀より金の方が価値が高いことが多く、手の可能性が広がるようです。

ただし6四の桂馬が後で取られそうな形なので、最終的には金と桂桂の交換になりそうです。

しかも先手は歩切れなので、▲7四桂以下がどうなのかが気になります。

▲7四桂以下△7一玉▲6二桂成△同玉▲2六歩△6四金▲2五歩△5一角▲5六歩で、ソフトの評価値+976で先手優勢。

この手順は先手にとってかなり力のいる指し方になります。

具体的には駒が相手の陣地に入っているわけでなく、大駒もまだそんなに働いていないので手を作るのが結構難しいです。

ソフトの先手優勢になっていますが、後手は中央が手厚いので先手はどのようにして手を繋げていくかになります。

金と桂馬を交換してから▲2六歩が地味な手ですが、△同歩なら▲同角で角が働いてきます。

よって後手は△6四金と桂馬を取りましたが、▲2五歩に後手の角のいく場所が難しいです。

先手の持ち駒に金があるので△3三角や△4二角は▲3二金があります。

また▲2五歩に△1三角は▲1二金△7九角成▲2一金△6九馬▲2六角で、ソフトの評価値+1036で先手優勢。

よって▲2五歩に後手は△5一角と引きます。

次の▲5六歩が筋といえば筋の手で、△同歩は▲6四角がありますので後手は受けに回ります。

▲5六歩以下△5二玉▲5五歩△4三銀▲4六歩△5三歩▲5八飛△6三歩▲4五歩△同銀▲5四歩△同歩▲4四歩△同銀▲6四角△同歩▲4六歩△同銀▲5四飛△5三銀▲4四金で、ソフトの評価値+2353で先手勝勢。

この手順の興味深いのは▲5五歩に△4三銀と引く形で、▲5五歩に何で取っても▲5六歩で後手はもちません。

よって△4三銀と引くのですが、次に▲4六歩と歩をぶつけます。

先手は歩の数が少ないので歩をぶつけて持ち駒を増やしたいのと、角がいまひとつ働いていないので角の活用を目指します。

後手は△5三歩~△6三歩と受けましたが、先手は穴熊で攻め合いにはならないので受けに回るのは仕方なさそうです。

先手は飛車が1筋にいても仕方ないいので、戦いの争点になりそうな5筋に回ります。

数手前までは大駒があまり働いてなかったのですが、これで働く形になりました。

以下先手は歩を使って相手の金駒の配置を変えて、角と金の交換から▲5四飛と飛車を活用する展開でこれで先手勝勢のようです。

大駒と歩の小技で攻めを繋ぐのがうまいです。

一気につぶそうとする攻めでは途切れてしまいますので、少しずつ駒を活用するというのが大事なようです。

細い攻めから大駒を活用するのが参考になった1局でした。